Never Ending Summer

バンコク在住日本人ギタリストの日記

improvisation no.55

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Phrae の朝の光景 2020年

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Amphawa の朝の光景 2014年

2枚の写真を撮った間には6年の隔たりがある。いろいろ変わっていくけどタイの朝の光景にはオレンジ色の僧衣が良く似合う。夜中に目が覚めてしまったもので昨夜部屋で最後に弾いた即興演奏のサウンドメモを聞きながらいろいろなことを思い出していて、最終的にこの2枚の写真にたどり着いた。裸足でゆっくりと歩く彼らの孤独な佇まいに異国でひとりで動くことの多い俺はなんだか惹かれるのだ。Phraeで2枚目の写真を撮ってそれを眺めた時に『ああ、これと同じような光景を以前に撮ったな…』とすぐに思い出した…というのも、昨年末から今年にかけて周りにも俺自身にもいろいろな変化があって、氷が解けていくように少しずつ過去の出来事やその時の感情を思い出すようになったからだ。ドラマの再放送みたいなもんだな(笑)俺にしかわからないドラマだけど。

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昨日は演奏する少し前にその回想状態に陥って急に胸が締め付けられた。時間の経過とともに混ざり合ったその複雑な感情を説明するのは難しいが、戻って来た過去の感情を今現在の俺が受け止めて《もう二度と戻れない》ということを実感している…というような不思議な感覚だ。実際のその出来事はもう4年近く前だったし、もうすっかり消化されたものだと思っていたが、心の底では消化しきれていなかったというわけだ。まだこんな感情が残っていたのか…と少し驚いた。しばらくするとメロディーが浮かんだので機材をセットして音のバランスを取っていきなり演奏を始めた。

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固まっていた心が溶けていく感じは音楽にも反映されているようで珍しく捻らずめちゃめちゃ素直に弾いている。素直に弾くとやっぱり子供の頃に聞いた80年代の映画のサントラのようなコード感になる。やっぱり弾き続けていると長年曲をやっていなくても自分のコード進行ってのが勝手にできてしまっていて、久しぶりにループ無しで完結した。ちょっと嬉しい。昨夜感じた感情もしっかり音に含まれている。あとはこの曲を弾き続けて消化するだけだ。どうなっていくか楽しみだ。曲名をつけようと考え始めたけど何を表現したいのかを言葉にするのはやはり難しくて、とりあえずギターの後ろでずっと鳴っているシーケンスの番号 [No.55] を仮題にしてみた。

写真の説明はありません。

素晴らしい瞬間ってのはどんなにつらい時期にもあって、その美しい瞬間を逃さないように心を保たなくてはいけない。この数年は感情が抑制されていたけど時間が経ってから思い出すのは圧倒的に美しい時間の方が多いのだ。それどころか悲しい出来事ですら愛しく感じるものだ。今を生きながら過去も同時に感じられるのはとても贅沢なことだし、心の中で幾重にも重なった美しい時間をそのまま音楽に乗せて届けられたらもう何も言うことはない。とりあえず日々精進だな。