Never Ending Summer

バンコク在住日本人ギタリストの日記

Noise Market 8 後記

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体感温度40度超えの一番暑い時間にトゥクトゥクの座席で熱風と排気ガスと荒い運転に意識朦朧としながら現場に辿り着くまで、Museum Siamが涅槃仏で有名なワット・ポーのほぼ隣にあるのだということを俺はぜんぜん理解していなかった…というのも前回出演した時は同じ季節に暑さでやられてしまってものすごく体調が悪くておまけに金もなくてあらゆる意味でどん底の時期だったからだ。その時はバスで行ってから市場を通り抜けてワット・ポーとは逆方向から辿り着いたが、体調と精神状態が悪過ぎてマーケットを見回る元気すらないひどい有様だった。当然周囲の景色など見て歩く余裕もなかった。思っていたよりひどい状態だったんやなぁと今回は思い知った次第。

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今回は過酷な暑さではあるけど体調がだいぶマシだったのでマーケットに出ているお店やミュージアムの周囲も見て歩いたが、場所柄もともと多いんだけど軍人と警官の量がそれにしても半端ない。『なんでやろ?』と思って尋ねたら、明けて今日、王室絡みの式典があるらしく、準備等で交通規制と警備が始まっているという。言われてみれば周囲のビルからは管弦楽団が式典で演奏する荘厳な曲の練習をしている音が聞こえていて、夕方からは車が完全に通行止めになっていた。どうやら俺はギリギリセーフで着いたようでトゥクトゥクで門の前に横付けしたが幸運だったようだ。

主宰しているPokが付けたであろう Noise Market という名前はマニアックなサブカル系イベントを思わせるけど、内容はいたって普通のマーケットだ。どちらかというと服やアクセサリーはハンドメイドが多くて洒落ているし、お客さんもみんなこざっぱりした格好で余裕を感じる客層だ。外国人も多い。近年は『プラスチックの使用を減らそう』ってスローガンを掲げているので俺の後ろにあるタワーのオブジェにはペットボトルやらコンビニ袋がぶら下がっている。お客さんは各々手提げ袋を持ってきていて店側は包装を極力減らして食器類も基本プラスチックは使わないようにしている。俺も一応気を使って昨日は水筒を持って行ったが、暑さで大量に水を飲むので途中で面倒になってしまって思いっ切りペットボトルで飲んでいた(笑)

出演者たちは新進インディーレーベルに所属するPOPSを演奏する若手アーティスト達が多いが、主催者の趣味趣向で実験的なこともやらせてくれるのでジャンルは様々だ。甘~いラブソングを聞いた後にゴリゴリのノイズアーティストが出てくることもあってそこはちょっと普通のマーケットではない(笑)昨日も遅掛けにゴルフさんのフリージャズトリオにPokがシンセで混ざったセッションがハードな音を出していたが、会場には若いミュージシャンも多いのでとても盛り上がっていた。

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俺は17時過ぎからの演奏でまだかなり暑かったが日は陰っていたので助かった。チルアウトスペースでの演奏だったのでけっこうたくさんのひとがゆっくりしていて状況としては悪くなかった。他にも近距離にステージがあるしギターアンプもなかったので静謐なアンビエントを演るには過酷…ってか無理なんだけど、まあいつものことなので気にはならない。何をやるかはその場で考えればよいのだ。とにかく普段会えない種類のお客さんが目の前にたくさんいるってのは俺にとっては願ってもない状態なので楽しく弾いた。ドイツ人の子供が興味津々でギターやらペダルをいじくろうとするのでなかなか始められなかったが…(笑)演奏の後でカセットが何本か売れたそうなので悪くない。

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映画とのセッションは開始が30分以上遅れた。警察から『目の前の道路で式典の打ち合わせをするのでその間待ってくれ』と言う要請があったからだ。しばらくするとGo が出て上映開始。リアルタイムの吹き替えは完全にプロの吹き替え声優チームが来ていたのでめちゃくちゃ上手かった。かたやミュージシャンは基本ノイズである。企画が面白すぎるなぁと思いつつ演奏していいたが、音響機器の容量に無理があって途中で何度かノイズに喰われてアタックが出なくて影響力のある音を作れなくて困った。あれではセッションをコントロールできない。当然リズムを刻むことも不可能だったので途中であきらめた。ネイザンの歌声とアコースティックギターは美しいがほぼ聞こえなかった。途中で彼も諦めてノイズを出し始めたのでほぼ全篇カオス。Pokのメロディカとサーシャのフルートの音色だけが唯一聞こえていた音楽的なパートだった。上映1時間を過ぎたあたりからノイズばかりで疲れたし飽きてきた。緩急って大事。打ち合わせの時点から『どこかでリズムを出す必要がある。今回のメンバーで誰かできるか?』と何度か言ってたんだけど、ノイズチームがそれを嫌ったのでそのまま流れてしまった。俺もしつこく言うのが面倒になって放置したんだけど《やっぱり思ったまんまやないかい!》と。終わってからノイズアーティスト/デザイナーのKITに『長いわ。めちゃ疲れた。やっぱり展開にリズム必要だっただろ?』というと疲労困憊って感じの苦笑いでうなずいていた。ある意味ほんまに実験的だった。何事もやってみないとわからない。