Never Ending Summer

バンコク在住日本人ギタリストの日記

退廃的な週末

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先週末は近年まれにみる勢いでひたすら酒を飲んでいた。ひたすら飲み続けたその相手からSNSにいきなりメッセージが届いたのは1年以上前の深夜2時過ぎで俺は相手が誰だかよくわからないままメッセージのやり取りを始めた。

『KOTA、何してるの?お酒飲みに来ない?』

『どこで?(…この人は誰だろう?)』

『私の家で』

『今から?(いきなり家?)』

『そう。今から』

『行かない。もうすぐ朝だし(面白そうだけどさすがに危ないよな…)』

『Fuck you』

ってやりとりだった。だいぶ前だけど相手が誰だかわからない上に最後のメッセージが人生で初めて自分に投げられた《Fuck you》という言葉だったので忘れようがない(笑)こりゃかなり酔ってるんだろうな…急に孤独に襲われたのかな?と、この国に住み始めた頃に良く陥った自分の状態などを思い出しながらベッドの上で苦笑いしたのを憶えている。やりとりの後で、いったいどこで会ったんだろう?とプロフィールの写真をチェックしてみると落ち着いた感じのタイ人マダムだったがやはり見覚えはなかった。次の日、夕方に再びメッセージ。

『昨日はひどいメッセージを送ってごめんなさい』

『かまわないよ。誰でも気分がすぐれないときはあるさ。飲み過ぎたんだろ?』

『そうなの。ゆるしてくれてありがとう』

『怒ってないから気にしなくていいよ』

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その後も定期的に深夜のメッセージが届いた。大概は酔っ払っている様子だったが、初回よりはまともだったので短いやりとりを繰り返しているうちに、タイ人のアーティストの友人でライブの映像を見て気に入って俺の音をチェックして酔っ払った勢いで例のメッセージを送ってきたことがわかった。ただ、まだこの時点で彼女と会ったことはないわけで『私が仕事でスクンビットに行ったときにランチに行かない?』という健全な誘いなどもあったが断り続けていた。ここに来たばかりの頃の俺ならばとりあえず行っていただろうけど、ある程度年月も経って流石に《会ったことのない人とメッセージの誘いに乗っていきなり飲みに行く》というのは無鉄砲だし相手は女性で年齢的に誰かの奥様だろうしフワフワと誘いに乗れないよな…とりあえず謎過ぎるし…という感じだった。

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俺は一般女性から見ればマイナス要素しかない駄目人間なわけだけど、長年人前で演奏をしているせいか、常にひとりで動くので寂しそうに見えるのか、隙だらけに見えるのか、こんな感じの出来事は定期的に起こる。駄目男に妙に興味を持ってしまう女性ってのはどこの国にもいるのだろう。他にも近隣国の女性からメッセージが届き続けている。完全なる偏見だが、その国の女性が日本人のおっさんにメッセージを送ってきて私の国で演奏するときは会いに行くとかバンコクに会いに行きたいとか言われても最終的に保険金を掛けられてゲットーでその女性の男に射殺されるってイメージしかわかないので放置している(笑)今までの経験上、緩やかな日常の中にも破滅への扉は常にスタンバイされているのである。勢いでその線を超えて何度かヤバい目に合ったことがあるが、今そうしないのは再びそうなるのが嫌だからではなくてシンプルに年齢だ。パワー不足でそのうち訪れる突発的でカオスな現実に対処するのが面倒くさいからだ。

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要するに先週末に俺が会いに行ったのはどう転んでもひどい事にはならないと確信したからだ。その後、彼女は実際にライブ会場に来て再度俺に非礼を詫びたし、2度目と3度目は大学生の娘やその彼氏、友人も一緒に来ていた。家族や友人を交えて何度か話せば暮らしぶりや人柄は伝わってくる。おまけに数度の離婚に子供が4人と盛りだくさんな人生。話を聞くだけでも楽しそうだしもう断る理由はなくなってしまった。彼女はかなりの酒豪のようなので、俺が潰れるまで飲んでも問題ない日取りが空くまで待って二年越しに実現した飲み会は、たくさんの絵画やオブジェと過剰なプラントでデコレーションされた清潔でこじんまりした家のダイニングでスタート。テーブルの上には手作りのタイ料理とボイルしたカニが用意されていて、白ワインから飲み始めて場所を変えつつなんだかんだと話しをしながら赤ワイン、ビール1ケース、日本酒 etc。交互に限界を超えては目を回しつつも復活を繰り返して宴は一昼夜続いた。彼女は流石に酔っ払っていたが終始ご機嫌な様子で真っ白で柔らかな生地のチュニックを纏って艶然と煙草をふかしながら座っていて、俺はといえば朦朧としながら自分のしゃべる英語のでたらめさに絶望しつつソファーの上で酔いに抗っていて『まったくもって退廃的だ…悪くない週末だよな…』とか考えていた。このままエンドレスで飲み続けられるかと思ったが結局俺が先に気絶した。完敗だったな(笑)

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帰るころにはものすごい数の酒瓶がそこら中に転がっていて、片付けながら笑ってしまった。もうしばらく酒は飲まないぞ…と思っていたら、

『で、次はいつ飲めるの?』

『え~と…そのうちね』

ヘタレやな…我ながらクールさの欠片も無い。

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