Never Ending Summer

バンコク在住日本人ギタリストの日記

A Scene of Bangkok Downtown

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近所の何でも売っている小さな商店が建て替えをやっているが、今は解体が終わって基礎打ちが始まった段階。なんだか粗い仕事ぶりやなぁと思っていたが、作業している男連中の顔をよくよく見たら、近所の男連中が集まって工事をしているようだ。川沿いの建屋はバラック小屋か廃材の木材を無理やり組み立てたみたいな小屋が多くて、これらの建物も明らかに自力で作られている。最近も帰り道の運河沿いの家が火事で焼けて立て直していたが、DIYで家を建てるってのはわくわくする作業だよなぁと毎日出来上がっていく小屋を眺めていた。子供が『僕もあれやりたい』って感じで指をくわえて見ている感じ。アパートが問題だらけなので引っ越しを考えるとして2階建てか3階建てのタウンハウスも視野に入れて探して住みながら自力で内装をやってみたいが、ひとりで住むだけでは家賃がそこそこ高いのでそこで何か商売をやらないと維持が難しい。

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内装作業ってのは仕上げの手前までが一番楽しい。ここに壁を作って、ここに窓、ライトがここに下がってカウンターはこんな形でその向こうにはこんな絵があって…という感じでイメージした空間を自分の手で日々実現していく感じが楽しいのだ。大概の場合は仕上げの時期は地獄のような日程になるので楽しんでいる余裕がぜんぜんなくなってしまうのだけど(笑)追い込みの最中に『いつの日か期日を気にせず納得いくまで丁寧に仕上げてやる!』とボロボロの状態で心の中で叫んでいた。ただバンコクでそれをやるとしても道具から揃えなおさないといけないので実現はいつの日になるやら…。

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今日もエントランスでは小学生の男の子が小さな女の子と遊んであげている。兄妹ではなくてアパートのスタッフやアパート内の店のスタッフの子供たちや近所の子供たちがエントランスに集っている。お母さん達が働いている間は年長の子供が小さな子供たちの面倒をみていて、仕事中に通りかかった大人達もみんな子供達に声をかけていく。ベンチでは黒猫が『こいつらうるせえな』って感じで半眼でその様子を眺めている。子供の頃に日本で見た下町の光景を思い出す。平和だなぁと思わず笑みがこぼれてしまう。この大家族のようなアパートのお父ちゃんに当たるオーナーはタヌキのようなお腹を揺らしながら改修業者になんだかんだ指示を出しながら走り回っている。彼は中国系だけあってめちゃ働き者だ。洗剤を買いにいつもの商店に行くとつい先月まで店番をしていたおばあちゃんがついに歩けなくなってしまったようで車椅子に座ってぼーっと空を見上げていた。おばあちゃんの傍らにはいつもぽっちゃりした老猫が付き添っている。彼女はとても賢い。日々は往く。俺も皆も日々老いていく。

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部屋に戻ろうとエレベーターに乗るとブルーのユニフォームがよく似合っているイタリア人らしく細く刈り込んだ髭面に長髪の伊達男が、

『よう、さっきギター弾いてたか?』と聞いた。

『ああ、弾いてたよ。うるさかったか?』

『いや、なんかおもしろかった。普段どこで弾いてるんだ?』

『決まってない。呼ばれたら行くんだ。明日近所でやるパーティーで弾くけど来る?』

『お、いいね』

『マジか。んじゃ会場はスクンビット53の…』

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ここ数か月でアパートにはアフリカ人やらヨーロッパ人やらの新しい住人が増えてきた。最近越してきたヨーロッパ系の女性は長身でとんでもなく足が長くて顔が小さくてキリンみたいだ。近所のローカルマーケットで会うとあまりに皆と体型が違うので景色から浮いて見える。アフリカの女性も体型が全く違うが、日本人だったら欠点として隠しそうなポイント、例えばものすごく大きなお尻とか…を彼らは逆に強調するような服を着ている。そしてそれがなんだかとても魅力的に見えるのだ。最近の新鮮な驚きだった。帰り道にたくさん見るムスリムの女性たちも細かいところでいろいろおしゃれをしているが、男性が洒落ているのが目につく。毎日のように会う長身のお爺さんは渋い色合いの腰巻に単色のシャツにムスリム帽子で杖をついて悠然と歩く姿がクールだ。暑い日はシャツをはだけて痩せた身体をさらしているがそれすらも様になっている。彼を見た後は漫画『浮浪雲』を思い出しつつ、あんな感じの超越した《佇まい》ってのはどうやって作られるんだろうな…といつも考えてしまう。長生きするならばあんな爺さんになりたい。