Never Ending Summer

バンコク在住日本人ギタリストの日記

この感じはもしかして…

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昨日イベント(というか長時間のワークショップって感じだったが…)が終わってビルを出たところで『KOTA、昨日はなにしてたんだ?』と言うので『さっきフアヒンから帰って来たところだよ。レコーディングの手伝いに行ってた。この週末は本当に暑くてマジで死にそうだ』と言ったらタイ人のゴルフさんとローディーのふたりが口をそろえて『KOTA。この暑さはスーパーだ。いつもとは違う。俺達も死にそうだ(笑)』と言ったので今年は例年より暑いってのは本当らしい。そんな中を機材を持って動いていたわけで流石に昨日は疲れ切っていたようで帰宅して飯を食っている途中から記憶がない。すぐに寝てしまったのだろう。そしていつものように朝5時の目覚ましの5分前に目が覚めた。体内時計ってめちゃめちゃ正確。

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昨日の会場はバリバリのローカルエリアにあった。別のフロアには保育園のようなフロアもあってビル一棟がそのコミュニティーの管理下にあるようだった。俺たちの演奏したところは瞑想をする為のフローリングの大きな部屋でお客さんたちは皆瞑想用の大きな座布団に座って演奏を見ていた。俺は《えらい変わったところでやってるなぁ…大学の生徒達の関係なのかな?》と思っていた。俺が到着した時にはイベントは始まっていてマイクを持った若い司会がふたりいて皆さんがいろいろ質問をして、それにゴルフさんが答えるって感じで講義のような雰囲気だった。しばらくして、『では演奏を』って流れになったので準備をして演奏が始まった。

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瞑想云々ってのは聞いていたので静かに演奏を始めたんだけど、みんな瞑想するどころか興味津々でじっと見ているし、ゴルフさんはいきなりノイズ系の実験的なアプローチを始めるし、どちらかと言うと瞑想ではなくライブの音だった。なので俺も途中から切り替えてライブの時のスイッチを入れた。1時間ほど弾き続けてそのまま終わるのかと思いきや、そこからどのように音を構築しているのかという即興演奏/アンビエントミュージックに関する質疑応答とそれに関する短い演奏を交えたやり取りが始まり、それは1時間半みっちり続いた。要するに俺は2時間半ステージの上にいたわけだが、今回ももちろん全篇タイ語なのでなかなか困った。意表をつかれたのは質問が止まないことだった。いつも会うライブに来るような連中とはかなり違う雰囲気のお客さんたちだったけど、とにかく真面目で勉強熱心。演奏前に既に1時間ほど質疑応答していたにもかかわらずである。ゴルフさんはタイでも有名なジャズインストラクターなのでこの手のやりとりには手慣れたもんで、皆を笑わせたりしながら質問に答えていく。俺はと言えば横で内容を必死でタイ語を聞き取ろうとしているだけだった。いつもふたりのライブの時は英語でのやりとりだし打ち合わせもほぼしないふわっとした雰囲気のまま演奏が始まるので、初めて彼がめちゃめちゃ喋ってる姿を見て話の上手さに感心。よく考えてみりゃプロなので当たり前なんだけど、演奏を含めて3時間半の長丁場を気を逸らさずに普通に喋り切った。素晴らしい。

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会場のビルに着いた時に何階でやるのかわからなくて3階の保育園で『演奏しに来たんだけど、どこに行けばいいの?』と聞いたら奥の方から日本人の女性が出てきて日本語で『会場は5階です』この時点で少し《ん!?》となっていたし、演奏をしながらも会場のみなさんを眺めていて《これは…もしかして》とある疑念がわいたので終わってからゴルフさんに聞いてみた。

『ゴルフさん変わったところ知ってるね。大学の関係?』

『いや、彼等はチェンマイの近くで1年に1回5日間のアートフェスティバルをやってて急にオファーがあって今年の1月に出たんだ。すごく良いフェスだったよ。いろいろなワークショップが出ていて退屈しなかった。そういえば日本の俳句のワークショップもやってたぞ』

『そうなんだ。司会の子達が主催なんでしょ?誰かの知り合い?』

『それが、最初は誰から聞いたのかわからないけど急に電話がかかってきたんだ。いつも出ているビッグフェスはビジネスライクで慌ただしいし内容にも飽きてたから出演してみたらすごく面白かったよ』

スピリチュアル系の集会、フェスにはヨガやアート系のワークショップ多数、有名アーティストへの突然の電話オファー、妙に勉強熱心でハイテンションなみなさん…ローカル全開の場所に場違いな日本人スタッフ…てか先ずはゴルフさんいきなりの見ず知らずの若者からのいきなりの電話オファーによく乗ったな。育ちが良いので受け取り方が素直。実際清廉潔白でジェントルで悪いところが何もない。今回もすべての質問に対して真摯な姿勢で応えていた。なので、育ちの悪い俺はこの会話の後で少し心配になった。

 

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帰りがけに挨拶をすると主催の若者が言った。

『今日はありがとう。ここは仏教系のスピリチュアルセンターなんだ』

『わかるよ。俺も一応仏教徒だから。日本の仏教だからゆるいけどね』

『何宗?』

『ん?詳しくないけどうちは禅宗系だよ。ZENだ』

『そうなんだ。また機会があったら…』

『ああ、機会があればまたね』

てな感じの会話もあって会場前からフアランポーン駅に向かうぼったくりじいさんの操る暴走トゥクトゥク車上で、ぜんぜん素直じゃない俺の頭の中はこんな感じだった。

これ新興宗教だよな…それも日本の…?

さて真相は如何に…?

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とりあえずスピリチュアルってのがなんだかぜんぜん知らんのでよくわからんけど、昨今は音楽を商売に結び付けるためにヒーリングだなんだといろいろな理由付けをしているが、金をとる為にはそれなりの理屈が必要なのか真偽のあやしい胡散臭い話も多い。ちょうど昨日の朝フアヒンのバスステーションに向かう前にギャリーと最近話題になっているチューニングの話をしていて、これに関しては人間の生理的な反応の話であるならば、より気持ち良いチューニングの方が聞いているみんなの為にはいいよな…と思っていたわけだが、バークレー出身のピアニストで某大手メーカーの音響機器開発をやっていた音の専門家で現在も現役の音響オタクである彼の答えは、

『よく知らん。あの話の根拠がハッキリしないから俺は気にしてない』

という素っ気ないものだった。

『そうなんだ。あれって根拠がないの?』

『ネット上のあの手の情報は信用できない。KOTAは気にしてるのか?』

『まあちょっとね。でも俺は普段チューナー使ってないからそれ以前の問題だけど』

『じゃあ関係ないじゃないか(笑)実際大した話じゃないだろう。良い音楽は良い音楽だ。チューニングは432Hzでも440Hzでも関係ない』

『そらそうだね』

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個人的には、

音楽は音楽でしかないので他の要素は邪魔 

だとずっと変わらず思っている。ただ、商売のネタならば俺の知ったこっちゃないのでお好きにどうぞって感じだ。オーラも波動もバイブスも全部関係なしに俺はシンプルに自分の思う良い音を奏でるって方が性に合っている。